1【演説全文】小林鷹之氏 自民党総裁選挙2025
小林鷹之です。世界をリードする日本をつくる、そのビジョンを掲げ、昨年の総裁選に挑戦をしました。あれから1年、全国各地を回る中で肌で感じたこと。それは賃上げ賃上げ、政府与党が声高に叫んでも実感が届いていない現実。そして何よりも次の時代を担う若者たちが、不安や諦めを抱いているという現実。諦めの気持ちからは明るい未来をひらくことなどできません。諦めではなく希望を。頑張れば報われるという実感を。現役世代がそう思えるような日本をつくります。新たな日本の国づくり、その先頭にどうか私、小林鷹之を立たせていただきたい。まずは冒頭、同志議員の皆さん、全国の党員・党友の皆さんに心からお願いを申し上げます。
閣僚経験が少ないとのご指摘もいただきます。確かに少ない。でも経験したポストの数だけで国を力強くけん引できるかといえば私はそうじゃないと思います。大事なことは、ぶれないこと。そして構想する力、事を成し遂げる強い意志だと思います。
私の強みは0から1を生み出すことです。例えば経済安全保障。誰も関心のない時にみずから取り組んで、わが国の中心政策に押し上げて、いま各国が重要政策として取り組んでいます。あるいは日本初となった宇宙安全保障構想、この必要性も自ら提案しました。あるいは、あの日本学術会議を説得をして軍民両用技術の容認、かじを切られることとなりました。私は常にわが国の先を見て、いま何をすべきなのか考えます。時として提案するのが早すぎて理解をされないこともあった。四面楚歌になったこともあった。でもそれが私の政治スタイルです。
私は日本を切りひらきます。その先に3つの未来像がある。まず1つの未来像は「力強く成長するニッポン」です。「低成長でもしかたがないよね」。そういう諦めの声も耳にします。私を含めた政治の責任でもある。だから私は成長し活力ある日本を、そして誰もが挑戦を続けられる日本をつくっていきます。子どもたちが大きくなった時に、世界に向けて「どうだ日本ってすごいだろ」。そう胸を張れるような日本をつくります。
この国は資源に乏しい。だから成長の源は科学技術です。もう1度、この日本をテクノロジー大国へと押し上げます。技術を起点に、強い経済をつくるんです。技術と経済で防衛力が上がる。経済と防衛力を裏付けに外交力が高まる。そうすれば国益にかなう形でルールを作ることができる。そうすれば経済力が上がるんです。経済、防衛、外交、経済という好循環を、ぐんぐんぐんぐん回していくことが、私は日本再生、そして世界をリードする日本への道筋だと考えています。
AI、量子、宇宙といった戦略産業に国が大胆に投資をします。半導体もそうです。4年前の夏のある日のことでした。国がやるべきことは10年先のビジョンを示すこと、そして、そこにどれだけ資金を投入できるか、それを示して国の本気度を示すことなんだと、そう言って半導体産業の再生がスタートしました。私は、そういう気持ちでスタイルで、政策を実現してまいりました。半導体の熊本や北海道のような事例を、全国、特に地方に展開をしていきます。地方が豊かになれば若者たちがふるさとで就職をする、結婚をする、そして安心して子育てに向き合うことができるんです。東京や大阪だけじゃなくて、地方に全国に、国を動かしていく経済のエンジンをつくります。地方が競い合いながら、国全体が活気づいていく。そういう日本を私はつくりたいんです。日本の力はこんなもんじゃない。「力強く成長するニッポン」をつくってまいります。
そうは言っても、物価や電気代の伸びに所得が追いつかない。そうした現実が目の前にあります。子育て世代を含めた現役世代が自由に使えるお金を増やします。その1つが所得税制、所得減税です。所得税改革、控除のあり方や税率構造を見直すことで、高所得者の方には一定のご負担をいただきつつも、中間層や現役世代をしっかりと後押ししていく税制改革を行います。そして、それまでの間は上限を設けつつ、いわゆる定率減税を実施します。
社会保険料について、医療のデジタル化、予防、あるいは検診を進めることで、現役世代の負担を軽くしていきます。そして負担能力のある高齢者の方々には、これまでよりも負担をお願いしなければなりません。若者のために、この点は率直に申し上げます。「頑張れば報われる」。その現役世代の確信を次なる成長に結びつけて、結果として全世代にとって豊かな社会をつくってまいります。
2つ目の未来像、それは「自らの手で守り抜くニッポン」です。私たちは、過度な楽観思想から脱却しなければならない。世界の厳しい現実を直視し、やるべきことをちゅうちょなく実行していかなければなりません。残念ながら、主権国家同士が戦争するような世の中になりました。自らを守る意思のない国を誰も助けてくれはしない。無人機、サイバー、偽情報、戦い方も変わった。わが国を抑止力を高めていくためには、GDP2%では到底足りません。国家安保戦略を改定をし、必要な額は詰み増します。
外交努力が優先されるのは当然です。「日本がいなければ困る」。これは先日、面会した台湾のトップ、シンガポールの首脳経験者、そしてアメリカの連邦議員たちから直接言われた言葉です。だから日米同盟を基軸としつつも積極的な外交を展開していきます。そして近隣諸国との関係においても、首脳自身が胸襟を開いて直接向き合っていく。そのことでインド太平洋の秩序を日本がリードします。グローバルサウス諸国との関係を深めていくことによって、米中以外の新市場創造戦略を私は構想してまいります。
経済安全保障、これも最重要政策の1つ。サプライチェーンの強じん化は待ったなし。そして情報通信のプラットフォーム、あるいはスターリンクのような衛星コンステレーション、生成AI。いまはほとんどアメリカに頼ってますね。自衛隊ですら、スターリンクを使おうとしています。私は他国に過度に依存するのではなくて、自律性の高い国を目指したいと考えています。そして富の源泉であるデータの保護を含めて、経済安保法の抜本改正をしていきます。そして懸念国の影響の強い、日本企業による企業買収に対しても投資審査を強化する。そして何よりも自民党内で静かに検討を進めてきたインテリジェンス。経済安全保障のインテリジェンス機関を立ち上げます。そして対外情報機関についても政治主導で取り組んでまいります。
食料安全保障です。国民の食卓に直結する農業は、国の安全保障上戦略産業です。コメの安定供給、農家の所得の向上これは必須。小麦、大豆、トウモロコシを含めた、食料自給率も上げていく。農業の大規模化、スマート農業だけではなくて中山間地の農業もしっかりと支えてまいります。
エネルギーについては、脱炭素ではなく低炭素へとかじを切ります。原子力は力強く推進していきますが、高くて不安定な再エネ政策については、この政策を見直してまいります。とりわけ太陽光パネルはもう限界です。だから特定国への依存も踏まえて、ここで私は立ち止まるべきだと考えています。過度な楽観志向から脱して、必要な手を速やかに打っていく。そこにタブーや聖域はありません。リアリズムに徹した安全保障政策を進めてまいります。
憲法改正も待ったなし。政治の要諦は危機管理。だから憲法への自衛隊の明記、緊急事態条項の創設。この点については協力いただける各党・各会派の皆さんとともに総裁任期中に憲法改正の発議をしていく決意であります。
3つ目の未来像、それは「結束するニッポン」です。分断ではなく調和、これが自民党が目指すべき社会です。最近ルールを守らない一部の外国人によって、国民の不安が高まっています。まじめに働く外国人のためにも、出入国管理を含めた外国人政策を厳格化していきます。外国人による安全保障上重要な土地や住居用の不動産の取得の規制についても強化をしてまいります。そして外国勢力による偽情報によって民主主義が侵されています。諸外国を参考に、外国による情報干渉については刑事罰、そして登録制度を設けて、わが国の民主主義を守ってまいります。
国民の結束、拉致被害者全員の即時帰国の実現に向けて、私自身が先頭に立ちます。そして皇統の維持、我が国が紡いできた悠久の歴史を次の世代に対して必ずや引き渡してまいります。
最後に自民党についてです。立党70年、わが国の背骨として機能してきたのが自民党です。でもいま、この背骨が大きく揺らいでいます。解党的出直しにあたって、私は2点申し上げます。1つは原点回帰です。「みんなでやろうぜ」。2009年、下野のときに当時の谷垣禎一総裁が発したスローガン、全国津々浦々に足を運びました。私はこうした国民との直接的なリアルな交流の中に信頼が生まれると信じています。そしてあの時つくった今の綱領への回帰。時代背景が変わったので、これは改定が必要だと思いますけれどもあの中に書いてある秩序の中に進歩を求める。その本質は今もなお生きていると考えています。
そして、もう1つは世代交代です。私は「ONE自民」、党が1つになった上で経験豊かな議員から知恵をお借りしつつも、この1つになった自民党を前面に立って引っ張っていくのは若い力だと思います。新しい世代がもっともっと前に出て自民党を、そして日本を動かしていく。「我々がやるんだ。我々がひらくんだ。我々がつくるんだ」。そういう気概なくして党も日本も、その未来はない。私はその先頭に立つ覚悟で、この総裁選に立ちました。
これまでよりも、もっとスピードのある決断を、そしてオープンな組織に、そして発信力のある組織に、私は変えていきます。私は派閥にとらわれません。しがらみもない。あるのは国家・国民のために戦う使命感とバイタリティーです。でも政治家だけが踊っても社会は変わりません。「民は水なり」です。国民の信頼がなければ、国家という船は浮かばないんです。信頼を失えば、国という船は覆る。だから私は国民の皆さんが安心と希望を手にすることによって、社会がさらに支えられ、もっと強くなって、その強くなった社会から、さらなる希望が生まれていくと考えています。
もう1度申し上げます。諦めではなく希望を。頑張れば報われる、その実感を。力強い、そして成長する日本をつくってまいります。日本の力はこんなもんじゃない。世界の真ん中にもう一度、日本を立たせる、その力をみなさんにいただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございます。